コラム・レポート
宮古島体験に浮かれ、サイテーの成り行きに(23)
【minamiのちょっとオキナワン】暮れの忙しさに紛れ、宮古島へ行ってきた。観光ではない。東京農業大学のオープンカレッジ「沖縄県宮古島の自然・文化と農業体験(秋編)」に参加させていただいたのだ。
この講座を知ったのは2007年の夏だった。宮古島、それに農業とは!告知を見た瞬間、鳥肌が立った。これ以上の組み合わせがあるだろうか。大好きな宮古島について学べ、しかも前々から興味をもっている農業とのドッキングなのだ。これはもう行くしかない!
しかし、都合がつかず、2007年秋もこの春の講座もむなしく見送った。今回は宮古島での農業体験が年末という、およそ休みの取れない時期での設定で考え込んでしまったが、2009年に持ち越したからといって休める保証もない。だから、「ええい、どうにかなれ!」と思い切って申し込んだ。
案ずるより産むが安し。予定を入れてしまえば、なんとか都合をつけるものである。仕事をやりくりして、3回の座学(ざがく)を受け、締めくくりとなる2泊3日の宮古島農業体験に出発することができた。1年半越しの念願かなったり!
思えば羽田から那覇(なは)経由で5時間、宮古空港に着いた瞬間から、私の頭の回線は切れてしまっていたのだろう。南国特有の明るい太陽と25度を越す真夏並みの暑さ、高揚(こうよう)した気分の輻輳(ふくそう)的な効果で、私はもう夢心地を通り越し、熱にうなされた子どもに過ぎなかった。
実習のサトウキビやヤムイモの収穫体験、マングローブ林の観察、宿泊した農場での生活等々、感じたこと書きたいことは山ほどある。
が、今はただ、ネジが巻き切れたせいで、あまりにもハメを外してしまった宮古島での3日間への懺悔(ざんげ)で頭がいっぱいだ。
島の神様に「オバカ」を反省するも
東京から引率してくださった教授の高橋久光(たかはし・ひさみつ)さんと、宮古亜熱帯農場におられる準教授の中西康博(なかにし・やすひろ)さんや友利行男(ともり・ゆきお)さん、研修生の皆さんなどが、我々受講生7人の面倒を見てくださる。作物の説明や収穫体験のサポートから、農場での自炊や夕食の宴の手配などまで、至れり尽くせりの3日間だった。
その間、沖縄が初めてだという受講生に、沖縄特有の気候や食材、文化などを知ったかぶりして話している私は、いったいナンなのだ?
行く前から恐れてはいた。私には、好きな所に行くと信じられないほどハイになり、帰ってくるとその反動で思い切り落ち込むという病気がある。今回は好きな場所と好きなことのダブルなので、かなりヒドい症状が出るのではないか・・・。
案の定、発症したが、それは想像を超えていた。最後の晩となった土曜の夕食の席でのことだ。私は「本に書いてありましたが・・・」を連発しながら、沖縄文化について口角泡を飛ばして語っていた。
こともあろうに、宮古島で生まれたり、住んだりしている人を前にして。昨日上京した人が東京の人に、東京について語って聞かせているようなものだ。これじゃ、語っているのではなく、騙(かた)りだ。
重症だった。頭の中ではイエローカードが盛んに提示されるのに、口からは次々に不穏当な発言が飛び出す。誰か私のグラスにアルコールではなく、オイルを注いだんじゃないの?
挙句の果て、「研究という生活手段をもって宮古島で暮らしている人が羨ましい」などと、のたまってしまった。現場の苦労も知らないで、偉大な研究者になんてこと言うのだ。
サイコーに盛り上がるはずだった宮古島が、サイテーの成り行きになってしまった。興奮が過ぎて、ハイテンションどころか、ただのクレイジーだ。
真夜中、頭を冷やしに私はホテルから歩いて5分の「張水御嶽(はりみずうたき)」へ行った。御嶽とは祈りの場所で、神社のようなものだ。驚いたことに明かりが灯っていた。物事をお祈りするのに時間帯は関係ないのだろう。
しばらくそこにいたが、心は鎮まらず、私はさらに歩いて平良(ひらら)港へ出た。真っ暗な海が広がる向こうに明かりに照らされた船が見え、日にちをまたぐ時間だと言うのに数人の男たちが働いている。
ぼんやり眺めながら、私はこの黒々とした海が私の荒ぶる心を飲み込んでくれればいいと念じていた(フリーライターのあべみなみさんが沖縄の話を中心に不定期に書きます)。
注:「張水御嶽」の「張」は正しくは「さんずい」がつきます。
【オキナワンの一品】東京農大オープンカレッジ
東京農業大学エクステンションセンター(世田谷区桜丘1-1-1、03-5477-2562)のオープンカレッジは半期ごとに開催する。「食と農」や「環境」など生活に密着した学問領域を扱う大学らしく、40を超える講座は食育や園芸から地域農業まで、誰もが興味を抱くテーマが多い。
「沖縄県宮古島の自然・文化と農業体験」は世田谷キャンパスでの座学3回と宮古島での2泊3日の実習の計6日間で、受講料8万円(テキスト、ツアー代含む)。次回開催は2009年春。
東京農業大学エクステンションセンター






