コラム・レポート

なぜか映画の「脇役」にもならないパン(28)

なぜか映画の「脇役」にもならないパン(28)ニューヨークを訪れた思い出3品を紹介します。本文中にも出てくるパストラミサンド。これは「カーネギーデリ」のもので、ボリューム満点です。

【ayaのパン流浪記】人は80%は目で食事をするといいます、5感のうちで視覚が1番食欲に影響を与えるものなのだそうです。ですから、映画やドラマの中で見たあの料理、あのスイーツがブームになることもありますよね。

古くはオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn、1929-1993)の「ジェラード」、最近では韓流ドラマに出てくる「チャプチェ(春雨炒め)」や「ジャージャー麺」などでしょうか。

映画、というとアジアよりヨーロッパやアメリカの印象があるのですが、彼らにとってパンは食卓に欠かせないはずなのに「パンが印象的」な作品は記憶がありません。「幸福のレシピ」、アニメの「レミーのおいしいレストラン」など料理ものもありましたが、これらの映画でパンは登場すらしなかった気がします。

随分前に、ニューヨークが舞台の映画「恋人たちの予感」の中でヒロイン役のメグ・ライアン(Meg Ryan)がカッツデリカテッセンで食べていたサンドイッチが物語で印象的な小道具として使われていました。が、あのサンドイッチの主役はあくまでパストラミ(スパイシーな肉のくん製)です。


パンはアイスクリームのウェハースのような位置づけで、ひじょうに薄く、しかもカリカリに焼きこまれてラスクのような感覚です。実際に食べた時に「ここでは肉が主食なのだな」と改めて感じましたし、映画でも肉がたくさんで「精」を付けられる食べ物として扱われていました。

アメリカやヨーロッパの食卓で、パンは必要ではあっても主役にならないのでしょうか。炭水化物なので、「生活が豊かになると格が下がる」傾向はあるのでしょう、日本の映画やドラマでも白飯を梅干でおいしそうに頬張る食事のシーンはほとんど見られませんので同じことですね。

それにパン単体では絵になりにくいかもしれません、やはりサンドイッチやカナッペなどにして、具材で彩りを添えて華やかさを出さないと映えない食品です。カッツのパストラミサンドは少し極端でしたが、通常のサンドイッチの場合もパンか具材かどちらが主役なのかと言われると難しいところがありますし、カナッペでは明らかに具が主役です。

一昔前、わが家ではサンドイッチはパンと具材を別々に用意して好きなものを好きなだけ挟んで食べるスタイルで昼御飯に登場しました。その時の自分の食べ方を振り返っても、耳なしで、心もとないくらいの強度のサンドパンが潰れるか破れるかというくらい具材を乗せて、サンドイッチどころかオープンサンド状態で具を楽しんでいました。

ソウルフードを食べに行った「シルビア」で出たコーンブレッド、サクサクのコーングリッツがたっぷりかかっています。

当時食べていたのは食パンでしたが、仮にバゲッドだったとしても私はほとんどタルティーヌ状態(薄切りにして上に具を乗せたオープンサンド)にして食べたでしょう。カードゲームの最中に手を汚さず食事が手軽に取れるように考え出されたというその発祥からしても、世の中一般的にはサンドイッチは具を楽しむものに違いありません。

今ではきっとその逆で、少しばかりのチーズでパンばかりを食べているであろうほど、私の中でパンは絶対的な主役です。色合い的に赤や黄色と言った華やかな食品より見劣りがする地味な茶色も私には黄金色、皮の内側に気泡がボコッと開いて艶(つや)っとしたクラムが見えた時にはパンだけでなく私の顔も輝くそうです。

そんな私に、パリの朝はバゲッドの香りで満ちあふれると、パリを訪れた友人が教えてくれました。早朝に、近所のパン店を訪れたヒロインが、紙袋から頭を出した焼きたてのバゲッドを小脇に抱えて、先端を少しかじって頬張りながら歩く。パリの街角がこんな風にスクリーンに映し出されたら、映画館近くのパン屋さんではバゲッドが品切れになると思うのですが・・・なかなかお目にかかりませんね。

滞在最終日の朝にタクシーに乗ってまで行った「エッサベーグル」で作ってもらったサーモンサンド、クリームチーズはドライドトマト入り。

日本にも本格的で絵になるパン屋さんが出現しており、増殖中です。営業時間が早いところが多いのですが、カフェを併設しているパン屋さんも増えているのでちょっとしたお料理と「焼き立て」パンでランチ、といった利用もできます。「パーラー江古田」、中目黒の「ジャンティーユ(gentille)」、奥沢の「クピド!(CUPIDO)」などが私のおすすめです。

あるいは、シンプルな食事パンを購入して帰って、スープ、肉や魚も入れたボリュームのあるサラダと共にいただくというのもいいですね(【ayaのパン流浪記】は首都圏で暮らすOLのayakoさんが不定期にパンを切り口にエッセイを書いています)。

店舗情報
「カッツデリカテッセン(Katz’s Delicatessen)」=205 East Houston Street(Corner Of Ludlow Street)、New York N.Y. 10002
「パーラー江古田」=東京都練馬区栄町41-15、03-6324-7127
「ジャンティーユ(gentille)」=東京都目黒区目黒3-1-1、03-3712-9610
「クピド!(CUPIDO)」=東京都世田谷区奥沢3-45-2、03-5499-1839

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