コラム・レポート
病みつきになる激辛火鍋で客を虜にする中華店(83-1)
【OL銀座食楽部】日本では「鍋」というと、冬の風物詩のひとつだが、四川火鍋(しせんひなべ)「天丹(てんたん)」では本場の四川同様に季節を通していつでも火鍋を味わうことができる。
四川地方は、盆地のため夏は蒸し暑く、冬は湿度が高く凍えるような寒さから身を守るために通年、火鍋を食べるのだそうだ。「日本でも、夏場の7月、8月は混むんですよ」と店長の黒瀧晶(くろたき・しょう)さんはいう。
四川火鍋「天丹」は銀座コリドー街の6丁目と7丁目の間の交詢社通り正面辺りにある。この場所に開店してから14年もの歳月を経ており、その間、業態が変わったとはいえ、店名はそのままで、20時過ぎともなると会社員で満席の状態になる。
「四川」というと激辛料理が特徴だ。この火鍋もまさに辛いのだが、辛いもの好きでなくても、一度食べると病みつきになるほど美味なのである。唐辛子だけでなく、中国の漢方薬や山椒(さんしょう)が入った薬膳(やくぜん)鍋でもあり、汗をかきながら味わうので、新陳代謝がよくなり、デトックス効果や美肌効果も期待できると聞いた。私も冷え性体質なので、汗をかきかき、食べることがたまらなく気持ちがいい。
赤いスープと白いスープの2色が鍋の真ん中で陰陽(いんよう、中国のもっとも大事な考え方)の形に仕切られ、基本はその2つのスープで、いろいろな具をくぐらせ、タレに付けて食すというものだ。赤は「麻ラー湯(まーらーたん)」という辛みスープで、白は「白湯(ぱいたん)」という辛くないスープだ。具は、豚ロース火鍋セット、ラム火鍋セット、海鮮火鍋セットというようにメニューから好みのものを選べる。
「天丹」の赤いスープ「麻ラー湯(まーらーたん)」には24種類もの漢方と中国の山椒(さんしょう)「花椒(かしょう)」などの香辛料が入っている。料理長の程とう(たい・とう)さんは企業秘密もあり、すべてを教えてくれなかったが、陳皮(ちんぴ、木の皮)、草茹(つぁおぐぅ、ふくろだけ)、党参(とうじん、人参の一種)、唐辛子、八角(はっかく、トウシキミの果実を乾燥させた香辛料)、クコの実、花椒、丁香(ちょうこう、クローブ)、香葉(こうよう、月桂樹の葉、ローリエ)、ナツメなどを配合しているという。
ただ辛いだけではなく、24種の漢方によって奥深い味わいになっていることが分かる。また、辛いといっても、本場四川の激辛ではなく、中辛に仕立ててある。
他方、白いスープ「白湯(ぱいたん)」は、鶏肉と魚介でダシをとり、あっさりとした上品な味に仕上げている。クコの実や蓮の実など漢方が4種類入っている。
取材とは別の日に火鍋が初めてという人、辛いものが苦手な人、激辛でも大丈夫というメンバー4人で行ってみた。上海がにの季節ということで、「上海火鍋コース」(5200円)という季節限定の火鍋をコース4人前と、私は中国の青島ビール(小瓶で483円)を頼んだ。
周りの席を眺めると、ガスコンロのテーブルがあるが、私達のテーブルはIHが設置されていた。時代が変わったなと思いつつ、鍋の具である野菜や練り物、ギョーザ、肉などが運ばれ、鍋のスープもぐつぐつしてきた。
カゴに盛られた野菜は、しいたけ、キャベツ、レンコン、エノキ茸、ほうれんそう、ニラ、モヤシ、ネギ、大根、サツマイモ、キクラゲ、レタス、タマネギの13種類だ。
練り物は、玉子ギョーザ、トック(米で作られたモチ)、うずら卵、スパム(ランチョンミート)、団子5種(イカ、エビ、鶏、豚、白身魚)である。それに、皮にほうれんそう、ニンジン、紫芋を練りこんだ色鮮やかな自家製のギョーザ、四川春雨、肉は黒豚肉と、ラムの2種類がしゃぶしゃぶ用に薄切りされている。
最初は、店員がテーブルに来て、つけダレを作ってくれるのだが、このつけダレが大変においしい。ピーナツペーストとゴマペーストをベースにして8種類の材料を調合して作られている自家製のタレで、オーナーの徐丹(じょ・たん)さんと夫で社長の黒瀧紀代光(くろたき・きよみつ)さんが2人でアレンジして開発したタレである。
このタレをベースに、大辛ペースト、ニンニク、パクチーなどを好みで混ぜ合わせ、最後に両方のスープを加えて作る。辛いのが苦手な人は、大辛ペーストを加えず、スープも白湯を加える。
辛いのが好きな私は、大辛ペーストを多めにいれ、最後に麻ラー湯を加えたタレを作る。各自の好みに合わせて、辛みを調節できるのがうれしい。最高の風味を添えるのが、粉末にした花椒で作った花椒油(かしょうゆ)だ。これをタレに加えると本当に魅惑的な味になる。
最初は辛いが、食べ進むうちに、この辛みがやみつきになり、止まらなくなってくる。身体の芯から汗が出て、意外にも、食べた後は口の中がさっぱりとする。最後の締めには、太くて白い平麺状の四川春雨だが、スープの中に入れると、透明になりもちもちした食感が味わえる。カロリーも低く、女性にはうれしいひと品だ。
メニューにはないが、通の人になると、火鍋のスープに赤(麻ラー湯スープ)と黒を注文するという。黒とは、赤よりももっと辛みを効かせた激辛スープのことだ。
この黒いスープにはまだ名前がないのだが、週に1回くらいは注文するお客もいるそうだ。そんな裏メニューを聞くと興味本位で挑戦してみたい気持ちが湧き上がってきた(【OL銀座食楽部】では複数の女性が実際にレストランを訪れ、そのレポートを毎週、金曜日から週末に掲載します。今回は「郷土料理で町おこし」がテーマのtsuboさんが書いています)。
注:「麻ラー湯」の「ラー」は「辛」と「束」を合わせた漢字です。
注:「陰陽」は、古代中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙の事物をさまざまな観点から陰(いん)と陽(よう)の2つに分類する考え方で、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陰と陽によって消長盛衰し、陰と陽の2つが調和して初めて自然の秩序が保たれると見ている。陰と陽とは互いに対立する属性を持っているが、善悪とは別。「火鍋」のスープが2種類あるのも「陰陽」の考え方からきている。
注:「程とう」の「とう」は「彫」の「周」が「丹」に類似した漢字です。
店名=四川火鍋「天丹(てんたん)」銀座本店(中央区銀座7-108、コリドー通り202、03-3569-7033)
営業時間=平日は11時から15時、17時から23時30分まで、土曜日・祝日は17時から22時30分まで。定休日は日曜日。
料金は料理が単品525円から、火鍋セット料理が3675円から5200円。
URL=http://www.ten-tan.com/






