コラム・レポート

4種類の恐怖を描いた「ミスト」は秀逸(63)

4種類の恐怖を描いた「ミスト」は秀逸(63) 原作がスティーブン・キング、監督がフランク・ダラボンというコンビが贈る第3弾「ミスト」((C)2007 The Weinstein Company)。

【yokoso銀座キネマ館】5月10日に「ミスト」が公開された。「ショーシャンクの空に」と「グリーンマイル」に続く原作スティーブン・キングと監督フランク・ダラボンのコンビによる第3弾である。

前2作はヒューマンドラマだったが、今回は「シャイニング」のような、スティーブン・キング得意の恐怖映画になっている。

テーマは「ミスト」=「霧」である。ある田舎町が霧に包まれる。霧の中には、恐ろしい「何か」が潜んでいるのだが、霧の中から脱出することができない人々の恐怖を、この映画は描いている。


過去の2作は人間ドラマだったが、3弾はキング得意の恐怖映画だ。

主人公の男性は、息子と買い物に訪れていたスーパーマーケットが霧に包まれてしまい、行き場を失ってしまう。主人公とともにスーパーマーケットに閉じ込められた人たちは、徐々に極限状態に追い詰められ、人間としての本質も、変わってしまうのだ。

「ミスト」では4種類の恐怖が描かれる。ひとつは霧の中に潜む「何か」である。この「何か」に対する恐怖感が、観客はあたかも自分たちもスーパーマーケットの中に閉じ込められているような気分で味わうことになる。この恐怖は、観客に対してスペクタクルな映画的な手法で迫ってくるのだが、その出来が素晴らしい。

霧の恐怖だけでなく、スーパーの中にもまた別の恐怖が広がりはじめる。

2番目の恐怖は、極限状態の人間同士が繰り広げる争いである。閉じ込められた人たちは、「何か」だけではなく、同胞であるはずの同じ町の住人たちとも、戦っていかなくてはいけなくなる。

その恐怖は、物理的に防げる「何か」の恐怖よりも、もっともっと深いものであり、観客は一部の人間に対して憎悪を抱くであろう。人間の恐ろしい本質が顕わになっていく過程と、そのおぞましさを「グリーンマイル」のような秀逸な人間ドラマとして描いている。

スーパーの中では、人間葛藤劇を繰り広げられる。

3番目の恐怖は、決断をする恐怖である。極限状態の中で、登場人物たちは、何度も決断を強いられる運命になる。どういう決断をすべきか、判断を間違うと確実に命を失ってしまう、そんな状況下での決断をする恐ろしさを、心理劇として表現している。映画を見ながら観客も、自分たちで決断をしている。そんな気分になってしまうリアリティが「ミスト」にはあるのだ。

4番目の恐怖がもっとも恐ろしい。その恐怖は、運命は残酷だということである。その人間に善意があろうが、悪意があろうが、運命は容赦しない。この恐怖は、見終わった後に改めて感じる恐怖でもある。「ミスト」は、近年稀に見る秀逸な恐怖映画である(敬称略。映画業界に精通しているハチさんが「銀座キネマ館」の支配人として不定期に映画の話を書きます)。

ミスト

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