コラム・レポート

囲炉裏で能登牛を焼き、土鍋飯、塩アイスでしめる(55-2)

囲炉裏で能登牛を焼き、土鍋飯、塩アイスでしめる(55-2)店内の8人がけの囲炉裏。店内にはカウンター、大きい囲炉裏、半個室があり、囲炉裏は見知らぬもの同士が横に並ぶ。店内では、スタッフがあれこれと声をかけてくれるので、親しみ感がわいてくる。

【OL銀座食楽部】新橋汐留にある囲炉裏料理「日本酒スローフード 方舟新橋店」へ足を運べば、土壁の店内はどこか田舎の雰囲気を漂わせており、炭火焼きの香りが出迎えてくれる。

「開店当初は炭の扱いに慣れず、途中で火が消えてしまったりして、(半焼けなどで)お客さんから苦情もありました」と店長の原達志(はら・たつし)さんが苦笑する。「方舟」はお客が大きな囲炉裏を囲みながら、自分で焼いていくスタイルをとっており、店側のスタッフが適宜、炭火の状態を見たり、焼き具合を確かめるようにしている。


囲炉裏で焼かれている岩魚。

囲炉裏で最初に焼いたのは新潟県南魚沼産「幻の渓流魚 岩魚(いわな)の囲炉裏焼き」(950円)である。体長が20cm以上の岩魚が串にさされ、チリチリと音を立てながら焼きあがっていく。

20分以上もじっくりと時間をかけてあぶった身はとてもホクホクしていて、頭から骨、尾に至るまですべて食べられる。炭の香りをまとうと、岩魚は川魚特有の生臭さが消え、白身で淡白な味わいに変化する。

魚だけでなく、肉も北陸の食材にこだわっている。「北陸健康鶏」や「越後のもち豚」など数ある肉の中から、原達志さんが一番のオススメという石川県能登産「能登牛の朴葉(ほおば)西京味噌焼き」(1650円)を選んだ。

「能登牛の朴葉西京味噌焼き」は左から牛肉、味噌、エリンギ、ししとう、にんじんが朴葉に乗っている。

囲炉裏の目の前に網が置かれ、大きな朴葉を敷いてその上に牛肉、味噌、野菜を乗せる。熱くなってくると、朴葉は肉を包むように丸くなり、朴葉の独特の香りや、味噌の匂いが漂ってくる。

焦げ付かないようにじっと様子を見ながら、しばらく酒を楽しむ。「能登牛」に添えられている「方舟」オリジナルの特製西京味噌をハシでつまむと、甘味が強く、肉につけずにそのまま食べても酒のさかなになるほどだ。

しばらくして焼けたようなので、味噌を牛肉や野菜につけて食べると、少し焼きすぎたせいか、身が固くなってしまっていた。どうも、私みたいに慣れていないお客が自分で焼く難しさを知らされた。

「ほたるいかと新生姜の土鍋ご飯」。ほたるいかがたくさん乗せられ、グリーンピースと木の芽でアクセントを出している。

囲炉裏焼を味わっている間に、40分はかかるという「丸土鍋ご飯」をあらかじめ頼んでおいたのだが、それが炊き上がってきた。「丸土鍋ご飯」は「方舟」名物で、能登こしひかりを100%使って炊き上げている。

「方舟」は季節ごとに旬の食材を使った「丸土鍋ご飯」を提供しており、総料理長の芝野一(しばの・はじめ)さんはさまざまな素材を組み合わせて、炊き上げては試し、独自の土鍋ご飯を追求しているという。こうして出来あがった旬のご飯が「ほたるいかと新しょうがの土鍋ご飯」(2人前で1300円)だ。

フタを開けるとしょうがの香りとともに鍋の底についているおこげの香ばしさが立ちのぼってくる。鮮やかな色をしたほたるいかの食感は、ひと口かむと、ぷりぷりとした中から中身がグニュッと出てきて濃厚なコクと風味が口に広がる。ご飯の下にしょうがが散りばめられており、全体の味を引き締めてくれるので、すいすいとハシが進んだ。

天然の塩を使った「塩アイス」は甘さが抑えてあリ、食べやすい。

最後に注文したデザートもこだわりをもつ「方舟」ならではのひと品だ。「能登の天然塩で作った塩アイス」(480円)で、海水を蒸発させ、時間をかけた天然塩を使用したアイスは甘さが控えめで、さっぱりとした舌触りなので、しめにぴったりといえる。このアイスはアラカルトだけでなく、コースの最後にも必ず出てくるので、人気も高いという。

都内にいながらにして、情緒ある「囲炉裏」と北陸の旬の味を組み合わせた店は珍しいのではないだろうか。原達志さんによると、秋に銀座8丁目に新たに店を出す予定という。この新橋店で土壁や畳などにこだわりすぎ、内装が予想よりも早く痛んでしまった反省を踏まえて、こんどは少しぜいたくな空間を演出することを考えているようだ。

「方舟」は囲炉裏端でお客が自分で焼いて楽しむという演出を作り出したが、意外にちょうどいい焼き加減で食べるのが難しく、せっかくのこだわりの材料を、もっともいい状態で食べられるとは限らない。

こだわりの食材を、最適に味わえると、もっと楽しさが増すだろうなと思いながら、店を後にした(【OL銀座食楽部】では複数のフードアナリストの女性が実際にレストランを訪れ、そのレポートを毎週、金曜から週末に掲載します。今回は趣味が食べ歩きと作曲だという紗羅さんが書いています)。

店名=「囲炉裏料理と日本酒スローフード 方舟 新橋店」(港区東新橋1-1-2、アソルティ東新橋2階、03-3574-7891)

営業時間=平日は17時から23時30分(注文は23時まで)、金曜日と祝前日は17時から24時(注文は23時30分まで)、土曜日は17時から23時(注文は22時30分まで)、日曜日が定休日。

料金は単品が450円から、コースは4000円から。
日本フードアナリスト協会

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