コラム・レポート
酒に魚、堅豆腐まで北陸を食べ尽くす店(55-1)
【OL銀座食楽部】JR新橋駅銀座口から汐留シティセンターに向かうと、その手前に出てくるのが囲炉裏料理の店「日本酒スローフード方舟(はこぶね)」である。銀座インズにも店があるが、本店はここ新橋店だ。
店名は「厳選された良いものだけを残し、後世に伝える」(店長の原達志=はら・たつし=さん)という「ノアの方舟」に由来しており、こだわりを持って選び抜いた食材だけを用いて調理している。
そのこだわりのひとつが北陸と新潟の地酒と食材のみを使用していることだ。オーナーの原誠志(はら・まさし)さん自らが地元に直接足を運んで生産者から仕入れるところからはじめ、現在では常時100種以上の地酒が置かれている。
中には関東ではなかなかお目にかかれない銘柄もあり、最初に何を飲んでいいか、迷うかもしれない。そんな時は「利き酒師(ききざけし)」の資格を持つ店長の原達志さんに相談すると、オススメの酒から、この店でしか味わえない知られざる銘柄まで、辛さやノド越しなども含めて丁寧に教えてくれる。
今回は店長の原達志さんの好みで、「1本芯の通った力強い味わい」があるという福井県「安本酒造」の「白岳仙 備前雄町(はくだけせんびぜんおまち)純米吟醸」(120mlで880円)を選んだ。
生産者履歴(トレーサビリティ)に徹底しているのは酒だけではない。食材も肉、魚、豆腐などは北陸からの仕入れている。そんな話を原達志さんと交わしているうちに出てきたのが、石川県白山(はくさん)産の「白山堅(かた)豆腐のサラダ」(890円)である。
「堅豆腐」は霊峰白山地方の昔ながらの伝統食で、縄で縛って持ち歩いていたといわれるほどの堅い豆腐で、野菜だけしか入っていないのに、まるで肉に近い食感の「堅豆腐」のかみ応えにより、ボリューム感がある。
ゴマのドレッシングがかけると、洋風の味わいになり、栄養価は高いわりにカロリーが低い1品だ。店では、サラダの他に「堅豆腐」を刺身でも食べられるので、より独特の甘味や食感を味わうには、刺身の方がいいかもしれない。
店のメニューを見て、ちょっと興味をそそられたのは石川県金沢産の「三種の加賀生ふと三種の味噌の田楽」(670円)で、泡ふ(生ふ)、よもぎふ、ごまふという3種類の生ふに、3種類の味噌を乗せて食べる料理だ。
泡ふには木の芽味噌、よもぎふに田楽味噌、ごまふに柚子(ゆず)味噌が合わせてあり、よもぎふに田楽味噌がもっとも気に入った。ふの食感がとてもやわらかで、もちもち感があり、まるでお餅のようにも感じられ、よもぎ団子を連想させてくれるひと品である。
北陸の食材と聞けばやはり一番楽しみなのは魚介だろう。実は私も3点盛り(1480円から)を注文して、待っていたのだが、取材当日は店側が刺身の盛りあわせの写真を撮るということになっており、3点ならぬ8点盛り(7000円)が登場したので、仰天した。
この8点盛り「漁港直送 天然近海物の鮮魚のお刺身盛り合わせ」の中身は石川県の富来(とぎ)漁港から仕入れたキジハタ、サヨリ、ニシ貝、シマエビ、サワラ、地ダコ、スズキ、サクラマスと豪華だ。
中でも一番強く印象に残ったのは、レモンでしめられたサクラマスで、脂がのっていて、酸味と香りがほどよくついている。
その日の天候などによって、魚介類は左右されるので、調達に苦労することもあるが、総料理長の芝野一(しばの・はじめ)さんは「刺身の盛り合わせは素材の味を大切にしている」と語り、極力手を加えずに素材を生かすことを心がけている(【OL銀座食楽部】では複数のフードアナリストの女性が実際にレストランを訪れ、そのレポートを毎週、金曜から週末に掲載します。今回は趣味が食べ歩きと作曲だという紗羅さんが書いています)。
店名=「囲炉裏料理と日本酒スローフード 方舟 新橋店」(港区東新橋1-1-2、アソルティ東新橋2階、03-3574-7891)
営業時間=平日は17時から23時30分(注文は23時まで)、金曜日と祝前日は17時から24時(注文は23時30分まで)、土曜日は17時から23時(注文は22時30分まで)、日曜日が定休日。
料金は単品が450円から、コースは4000円から。
日本フードアナリスト協会





