コラム・レポート

武田真治、広末涼子、藤本七海の「子猫の涙」は快挙(36)

武田真治、広末涼子、藤本七海の「子猫の涙」は快挙(36)2008年1月に公開される映画「子猫の涙」に出演する武田真治さん(右)と藤本七海さん(copyright2007「子猫の涙」製作委員会)。

【yokoso銀座キネマ館】東京国際映画祭が10月28日に閉幕した。アメリカとの合作アクション「ミッドナイトイーグル」で幕を開け、これまた合作の「シルク」で幕を閉じた。しかし、残念ながらこの2本に関しては、あまりお勧めできる作品ではない。

映画祭で見た人たちの間では、特に「ミッドナイトイーグル」の評判が悪い。作品の出来が悪いと、映画祭の出品がかえって逆効果になってしまうこともあるのだ。


「子猫の涙」の1場面。

一方、日本映画でも小さい作品には光ったものがあった。「ある視点」部門で特別賞を受賞した「子猫の涙」(2008年1月26日一般公開)は、力強く気持ちのいい映画であった。

メキシコオリンピックで銅メダルを取ったボクサー・森岡栄治(もりおか・えいじ、1946-2004)の半生を、甥である森岡利行(もりおか・としゆき)が監督として描いた作品である。半生といっても、プロボクサーとしての引退後の話で、基本的には転落ストーリーだが、娘の視点を通して描かれる。

森岡を演じるのは武田真治(たけだ・しんじ)だ。女性にはもてて、生活にだらしがない一本気な男をうまく演じており、人間としての森岡の魅力を感じさせてくれる。

「子猫の涙」の1場面(右が広末涼子さん)

映画で光っているのは広末涼子(ひろすえ・りょうこ)だ。森岡の愛人になる水商売の女性役だが、こちらもだらしがない女をうまく演じている。

いつの間に、広末涼子はこんなに深みのある演技が出来るようになったのだろうか。愛人の存在が、とてもリアリティのあるものになっているのだ。

さらにいいのが娘役の藤本七海(ふじもと・ななみ)だ。彼女の存在が映画の中で、よいエッセンスになっている。娘の視点を通してボクサー森岡を描いた監督の狙いは、成功していると私は思う。

予算も少なく、公開規模も大きくはない。しかし「子猫の涙」は、お金をかけなくても、感動できる映画は作れるということを実証している。多大な制作費をかけて、うまく機能しない作品も多い中、この映画は快挙だと思う。

小林政弘(こばやし・まさひろ)監督の「愛の予感」も、すごい作品だ。ロカルノ映画祭でグランプリを取った映画だが、非常に意欲的な内容になっている。

登場人物は、監督の小林政弘と、渡辺真紀子(わたなべ・まきこ)のほぼ2人だけで、冒頭にインタビューシーンがあるが、以降は台詞(せりふ)がまったくない。空気音だけで、平板な日常が繰り返されるのだが、その日常が少しずつ変化していくのだ。まさにドキュメンタリー映画を見ているような錯覚に陥るのだが、実はドラマである。

この作品は、監督と観客の我慢比べである。その我慢比べに勝った時、観客には静かな感動が待ち受けている。私自身は、残念ながら監督との我慢比べに負けてしまった。

11月24日から公開だが、ぜひ監督と我慢比べをしていただきたい(敬称略。映画業界に精通しているハチさんが「銀座キネマ館」の支配人として不定期に映画の話を書きます)。
子猫の涙

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