コラム・レポート

擬似ドキュメント「パラノーマル」はよくできたホラー映画(25)

擬似ドキュメント「パラノーマル」はよくできたホラー映画(25)日本では1月30日から公開されている「パラノーマル・アクティビティ」((C) 2009 Oren Peli d.b.a. Solana Films.)。ゲームデザイナーのオーレン・ペリが監督・脚本を務めた自主制作映画で、監督の自宅を使って7日間で家庭用ビデオで撮影され、編集作業は自身が所有するパソコンを使って行われた。

【ケイシーの映画冗報】「パラノーマル・アクティビティ(Paranormal Activity )」、訳すと「超常現象」となるでしょうか。邦題も英語のまま、作品をダイレクトに表現するタイトルですね。

自宅で怪奇現象に悩まされるカップルが、その原因を探るため、日常生活をビデオカメラで記録、その映像を「地元の警察から提供を受けて」公開したというテロップが出て、映画がスタートします。

こうした形態の作品は疑似ドキュメンタリー(「モキュメンタリー」あるいは「フェイク・ドキュメンタリー」とも)と分類され、「実在する(した)かのようなツクリモノ」とでも言えるでしょうか。

古くは1938年、火星人の襲来を題材としたラジオドラマ「宇宙戦争(The War of the Worlds )」を名優オーソン・ウェルズ(Orson Welles、1915-1985)が実況中継風に演出し、実際の出来事と信じた聴衆がパニックになったという事例があり、疑似ドキュメンタリーの成功例として知られています。


2007年のスクリームフェスト・ホラー映画祭、2008年のスラムダンス映画祭などで上映され、2009年9月25日にパラマウント映画の配給で上映館数わずか12館という小規模公開から10月23日には1945館となり、全米初登場48位だったのが、公開5週目にして週末興行収入で1位となった。スティーヴン・スピルバーグがリメイク権を得て、エンディングがオリジナルと変えられる見通し。

映画では、魔女伝説(架空のもの)を追い、行方不明となった学生が残した映像が捜査機関から提供された、という設定で大ヒットした「ブレア・ウィッチ・プロジェクト(The Blair Witch Project )」(1999年)が3万ドルという低予算でありながら、世界の興行収入で2億4000万ドル(約240億円)も稼ぎ出したことで有名です。

最近では、ニューヨークを襲った怪物を一般人が「たまたま」撮影したという「クローバーフィールド/ハカイシャ(HAKAISHA、Cloverfield)」(2008年)がありました。この作品にもオープニングに「アメリカ国防総省の保管映像」というテロップが示されます。

難事件の証拠や軍の情報映像が、すんなりと映画館で観られるのだとしたら、当局にとって大問題です。ですから、本編に挿入されるテロップや、映画の宣伝で使われる逸話は、映画館のスクリーンという異界に観客を誘導するためのいわば「マクラ」なのであって、観ているほうも「ツクリモノとして」として楽しんでいるはずなのですが、ときには「マジメ」に受け取ってしまうことも。

過去のハナシですが、あるカー・アクション映画で「改造車を実際に超高速で走らせて撮影した」という宣伝がされたことがあります。これを信じて、「本当にモンスター・マシンがブッ飛んでいるんだ!」と熱く語る知人がいたのですが・・・。

実情は低速度撮影(コマ落とし、とも)で、1秒間に24コマの映画フィルムのコマを抜き、改造したマシンを高速で動いているように見せたのです。急加速と同時に、登場人物の動きがカクカクしてくるので、子細に観ていると判るハズなのですが・・・。

1950年代、アメリカの西部劇に影響された日本でのウェスタン・ブームにおいて、「映画スターのだれが一番の早撃ちか?」がファンの間で語られたものでしたが、その多くがコマ落としやカット割りですばやい抜き撃ちを見せたり、早撃ちシーン専用の拳銃を使ったものでした。

もちろん、射撃も空砲で、実弾が飛びだし、反動が起こる実弾射撃ではありませんよ、映画ですから。

もっとも、本場アメリカでは、ブームの影響からウェスタン・スタイルの早撃ちを実銃と実弾でやって、自分の脚を撃ってしまう症例が続出し、「ダッジ・シティ(西部劇によく登場する町)病」と名付けられたことも。マジックの「タネ」ではありませんが、映画も「作品」なので、「ツクリ」は当然なのです。あまり本気にせぬように・・・。

本作も、さまざまな話題が提供されました。「1万5000ドル(約150万円)で作られた作品が、アメリカ国内だけで1億ドル(約100億円)以上の興収を記録」、「全米12館、レイトショーでスタートした劇場公開(2009年9月25日)が、5週間後には1800館を超える規模に」、「スピルバーグがリメイク権を手に入れたが、精査の結果、オリジナルのまま公開することに決定」、「監督・脚本・制作・編集を担当したオーレン・ペリ(Oren Peli)は、本業はゲームソフトのデザイナーで、映画に係わったことなどなく、かれも含めて撮影のスタッフはわずか3人」

いずれもセンセーショナルなもので、自分のような「実はホラーは苦手」な人間にも足を運ばせるだけのパワーを発揮しています。苦手なジャンルなので、正直「ン?」という部分もあったのですが(ただ単に怖がりなだけかもしれませんよ)、映画という娯楽ジャンルでの成功例であったことは間違いありません。

椅子から飛び上がりそうになったことが2回ありましたし、映画が終わり、劇場内が明るくなるまで、誰も席を立つことがなかったほどでしたから。次回は「ハート・ロッカー」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します)。
パラノーマル・アクティビティ

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