コラム・レポート

「ドラッグ天国殺人事件4」(3)2人の売春夫が話し合う(59)

「ドラッグ天国殺人事件4」(3)2人の売春夫が話し合う(59)空からふかんしたゴアの海岸線は山もあり、野性的で壮麗なながめだ。

(「ドラッグ天国殺人事件4」は連作のオムニバス方式の第4弾で、5回連日で掲載します。第1弾は7月3日から6日、第2弾は7月26日から30日まで、第3弾は8月27日から31日まで掲載しました)
【印度の玉手箱】ロッキーはあの夜のことを今一度、反すうしてみた。久々の「フルムーンパーティー」というので、自分は無論、仲間はみな興奮していた。お目当ての外人女性をものにできる絶好のチャンス到来なのだ。

ゴアのフルムーンパーティーは悪名高く、ドラッグ、アルコール、セックス三昧(ざんまい)の無礼講(ぶれいこう)で、とくに離れ小島でのそれは解放感も大きく、相手構わずの乱交パーティーだった。

日ごろから目をつけていたソフィをこの機会になんとかものにしてやろうと、燃えたことはいうまでもなかった、そのため、仲間を張らせ、少女の動向に常に気を配っていた。アンリが少女を船に乗せて島に繰り出したとの情報をかぎつけたときは、迅速(じんそく)に動いてモーターボートで後を追った。


ゴアのひなびた漁村。素朴な手漕ぎ船が郷愁をかもす。

すぐに外洋に乗り出した帆掛け舟に追いついて、敵の船内に乗り込んだ。海上での激しい乱闘となったが、あえなく自分はこてんぱんに打ちのめされた。船底に伸びていると、アンリに首根っこをつかまれ、ソフィの行方を厳しい口調で問われた。そのとき初めて、少女の姿が跡形もなく消え失せていることを知った。

どうやら、取っ組み合いにぐらぐら揺れる船の中で重心を失って海に転げ落ちてしまったものらしかった。そのとき、仲間が自分を抱え起こして、モーターボートへと移らせた。アンリが海に潜(もぐ)って、必死で捜索(そうさく)し始めるのが、紫に腫(ふく)れ上がった目の縁をかすったが、自分たち一派は手助けすることなく、一目散に海上を走り去った。

翌朝、少女の溺死体(できしたい)が磯に打ちあがったときはさすがに、良心の呵責(かしゃく)を覚えた。遺体を目の当たりにしたときの、卒倒しそうな衝撃をなんと表現したものか。沖に出たばかりで水深はさほど深くなかったし、きっと大丈夫、首尾よくアンリが見つけているはずだと、楽観していたのだ。本当に大変なことになってしまったと、ひざがガクガクし、目の前が真っ暗になる心地だった。

3日3晩一睡もできずびくびくおびえ続けていたが、案の定、容疑者の1人としてサツにしょっぴいていかれた。ソフィの体内から精液が検出されたことを知らされたときは、てっきりアンリのものと思い込んだが、奴とはいわば秘密を共有する共謀者でもあり、サツにばらすわけにはいかなかった。

はっとわれに返ると、アンリがとがめるような口調で責め立てた。
「そもそもは、おまえがいけなかったんだぞ」

さすがに罪の意識を覚え、青ざめた面持ちで陰うつげに黙り込んでいると、
「まぁ、起こってしまったことをいまさらとやかく言っても始まらんがな、互いに罪をなすり付け合ってもしょうがないよ、一致団結せんとな」

それから、アンリは周囲を用心深く眺め回して、看守が居眠りしているのを認めて、急に秘密めかした小声になって、

「おまえ、まさか、漏らしてねえだろうな」
と確認した。ロッキーは滅相(めっそう)もないという顔で言下に否定した。
(【印度の玉手箱】はインドで暮らすモハンティ三智江さんがエッセイやショートストーリーを不定期に書きます)
ホテル・ラブ&ライフ

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