コラム・レポート

「ドラッグ天国殺人事件4」(2)地元有力者の息子が犯人か(58)

「ドラッグ天国殺人事件4」(2)地元有力者の息子が犯人か(58)ゴアのカベロッシムビーチにあるホリデーイン・リゾート高級ホテルのロビー。

(「ドラッグ天国殺人事件4」は連作のオムニバス方式の第4弾で、5回連日で掲載します。第1弾は7月3日から6日、第2弾は7月26日から30日まで、第3弾は8月27日から31日まで掲載しました)
【印度の玉手箱】土地の有力者のにやけた面構えがロッキーの脳裏によみがえった。だいぶ前、ジョーンがソフィを高級車でドライブに連れ出す現場を目撃したことがあったのだ。少女の行きつけだったレストラン「デアデヴィル」にも気が向くと、ふらりと顔を出しては、ヘロインとスコッチのちゃんぽんでラリっていたっけ。金があるだけにレイバンのサングラスと、リーボックのジーンズでいつもめかしこみ、気障(きざ)なプレーボーイだった。

「カトリーヌは黙って、見過ごしていたのか」
過保護の母親を思い浮かべたものだろう、アンリが意外そうに問いただした。

「知らぬが仏とはおまえのことだな、カトリーヌはドラッグ売買に手を染めていたんだぜ。ジョーンは高値で買ってくれる上客ゆえ、おもねっていたのさ」


北ゴアには美しい川も多く、屋形船で周遊できる。

あぁ、そういうことかと、アンリは納得いったような顔をして言った。
「これでなぞが解けたよ。どうも、ソフィの母親には、正体不明のいかがわしさが匂うと思っていたが、払いがいいため、客のプライバシーには深入りしなかったんだ」

カトリーヌが以前、アンリを買ったことは知っていた。そう、おそらく精液はジョーンのものだろう。が、自分やアンリ、貧乏漁師のかーちゃんどもが外人旅行者に体を売ってできた子らと違って、州政府要人の息子なのだ。

法の網が及ぶことはないだろうと思うと、しみじみ卑(いや)しい出生が疎(うと)まれた。アンリがスウェーデン人との混血であることは知っていたし、自分はイタリアとの合いの子だった。

「天真らん漫(てんしんらんまん)と思っていた15歳のフレンチガールにまで両天秤(りょうてんびん)かけられていたとは、情けないよ。500人斬りのビーチボーイ王の名声が泣くというもんだ」

ロッキーは振り払っても振り払っても、キングのオーラに魅せられ女は蛾(が)のように寄り集まってくるとうそぶいていたプライドが泥靴で踏みにじられたような顔をしていた。

「一番の役者は死んでしまった、ソフィだったかもしれんな」
ぽつりと自分は漏らした。
(【印度の玉手箱】はインドで暮らすモハンティ三智江さんがエッセイやショートストーリーを不定期に書きます)

ホテル・ラブ&ライフ

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