コラム・レポート

「ドラッグ天国殺人事件2」(5)ソフィの死は迷宮入りへ(51)

「ドラッグ天国殺人事件2」(5)ソフィの死は迷宮入りへ(51)鉄格子の裏の囚人の心境たるや、いかに。ドラッグ所持のかどで外国人旅行者も数少ないが捕まっている。

(「ドラッグ天国殺人事件2」は連作5編のオムニバス方式の第2弾で、5回連日で掲載します。第1弾は7月3日から7月6日まで掲載しました)
【印度の玉手箱】2年ほど前、当時18歳だった代議士の長男はラリって白人女性をスポーツカーに同乗させ、政敵の息子に追跡され、白昼の路上でカーレースを繰り広げ、その挙句(あげく)に対向車と衝突事故を起こしたことがあったのだ。

幸いにも、被害者も本人らも軽いケガで済んだが、あのときももみ消すのに躍起になってあちこち走り回ったものだった。が、今度の事件は人の死が絡んでいるだけに、重大さでは比べものにならなかった。

ほんとに厄介なことになったもんだと、マックは内心ため息をつきながら、臆病な子羊のようにおもねる口調で言った。

「これ以上、先生にご迷惑が及ぶことのないよう即刻処置いたしますんで」


額にびっしょり冷や汗をかいていた。代議士の口利きでせっかく昇進した警部、捜査課長補佐の地位を、鶴の一声で格下げされてはたまらなかった。

「よかろう。あと、マスコミへの対応策だがね、母親がドラッグ売買に手を染めていたと流したまえ」

マックは畏(かしこ)まって応じながら、さすが海千山千の汚職政治家だけのことはあるわいと、その腹黒さにうなった。

カトリーヌがアンジュナビーチの常連で、ドラッグ浸りだったことの調べはすでについていた。偉そうに抗議しても、自身が悪癖に染まっているから、娘まで親を真似た挙句のけったいな死に方をするんだと思った。

娘の日記にも、父が身近にいないことの寂しさが吐露されていたし、きっと私生児だったにちがいない。思春期の多感な少女に、前途を悲観するあまり自殺されたって、悪母としては文句は言えないところだ。

マックはふと長年の職業柄の勘のようなもので、カトリーヌがドラッグの売人だったというのは案外、当たらずとも遠からずかもしれんなと思った。

代議士の戦略が功を奏して、カトリーヌはほうほうの呈で自国に逃げ帰った。が、後日、本国に運んだ娘の遺体を改めて検死解剖させ、腎臓が抜き取られていたとの極秘情報を、インドのマスコミに売った。

パナジ暑はこの不祥事で始末書をとらされ、臓器売買汚職で監察医は免職処分、マック自身も昇進を取り消された。国際社会でパワーを持つ先進国政府を盾にした外国人女の復しゅうがいかに恐いか思い知らされた1件だったが、すでに後の祭りだった(第2部了)。
(【印度の玉手箱】はインドで暮らすモハンティ三智江さんがエッセイやショートストーリーを不定期に書きます)
ホテル・ラブ&ライフ

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