コラム・レポート
「ドラッグ天国殺人事件2」(4)ソフィの母親が怒りの反撃に(50)
(「ドラッグ天国殺人事件2」は連作5編のオムニバス方式の第2弾で、5回連日で掲載します。第1弾は7月3日から7月6日まで掲載しました)
【印度の玉手箱】とにかくあの毛唐が事故死で納得するはずはなかったし、犯人さえ挙げてしまえば、納得するだろうともマックは思った。現実には殺意はなく、ラリった少女が男と肉体関係を持った後、不慮(ふりょ)の溺死(できし)、もしくは自殺したとも考えられたが、場合によっては殺人罪も擦(なす)り付けてしまえばいいんだ。さて、どいつをいけにえにしてやろうかと、マックは舌なめずりした。
アリバイ不明で、拷問すると、すらすら供述を変える弱気なやつが一番いい。ドラッグ売買の取り持ちをやっていたエディはまずかった。いかがわしい売春夫のどちらかひとりがいいだろうと思った。
それにしても、男の自分ですら思わずため息が漏れるほどのきれいな少年たちで、自分にはさすがにその趣味はなかったけど、ホモっけのある部下におかまを掘らせ、見物としゃれ込むのもいいなとにんまりした。
しかし、拷問の等級を挙げたにもかかわらず、しぶといというか、アンリとロッキーはなかなか供述を曲げなかった。
そうするうちに、被害者の母親がいっこうに動かない警察に業を煮やし、マスコミに助力を求め、インタビューで「この事件には、有力者が絡んでいる」と暴露する騒ぎにまで発展した。
一部の英字紙がカトリーヌが漏らした政治家の名前と、ドラッグ浸りの彼のどら息子も、少女がよく出入りしていたレストランに入り浸っていたことをすっぱ抜いたため、署内は途端に蜂の巣をつついた騒ぎになった。少しカトリーヌを甘く見たようだなと、マックは歯ぎしりした。案の定、当の政治家から電話がかかってきて、頭ごなしに叱り付けられた。
「何をやっとるのかね、君は。常日頃、政治家にとって、スキャンダルは一番の命取りになると口を酸っぱくして言っておったろうが」
「はあ、申し訳ありません。まさか、先生にご迷惑をおかけすることになろうとは思ってもみなかったもんで」
「ジョーンの補導歴もあって、私が神経質になっていることは知ってるだろう。なんのため、高いプロテクト代を施してやっているのだ」(続く)
(【印度の玉手箱】はインドで暮らすモハンティ三智江さんがエッセイやショートストーリーを不定期に書きます)
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