コラム・レポート

「ドラッグ天国殺人事件2」(1)15歳ソフィーの死に3人の容疑者(47)

「ドラッグ天国殺人事件2」(1)15歳ソフィーの死に3人の容疑者(47)ゴアの野生動物保護区は珍しい植物や、野鹿などの動物がいっぱい。

(「ドラッグ天国殺人事件2」は連作5編のオムニバス方式の第2弾で、5回連日で掲載します。第1弾は7月3日から7月6日まで掲載しました)
【印度の玉手箱】西インドの有名なリゾート地、ゴアの首都パナジの警察署は10日前、アンジュナビーチでフランス人少女の全裸死体があがった事件で、のどかな常日頃と打って変わって、緊迫した雰囲気に包まれていた。

検死の結果、15歳の未成年少女、ソフィ・オベールの胃内から大量のドラッグとアルコール、膣口に精液が残されていたことが判明したため、捜査一課は強姦殺人事件として動き出していた。直接の死因は溺死だったが、死体のあちこちに打ち身や切り傷があるのは強姦犯が無理強いした際に振るった暴力とも疑えたのである。

旅行者のレイプ事件はわりとよくあることだったが、このような不審死は3年ぶりくらいだった。もっとも、レイプといっても、肌を露わにした性的にフリーな欧米女性の側に落ち度があることもあり、線をどこで引くかが難しかった。加害者は例外なく、同意の上と主張するのだ。


40年配の屈強な体格のベテラン刑事、マックは3人の容疑者の自白内容を改めてテープで聞き直しながら、厳めしい顔つきで考え込んでいた。

ソフィが当日20時過ぎまで、アンジュナビーチの人気ナンバーワンのレストラン「デアデヴィル」にたむろしていたことは、第1の容疑者、店のマネージャー、エディの証言でわかっていた。

ちょうど同じ時間帯、店内にいた第2の容疑者、白人客向け売春夫アンリもそれは証言していた。母親のカトリーヌから旅行不在中の娘の監視を仰せつかった現地ガイド、トミーを事情聴取したところ、四六時中付きまとうのを被害者に疎(うと)ましがられ、少女のたっての頼みで30分だけ店に置き去りにした途端、まんまと逃げられてしまったと嘆いていた。トミーが店を出たのは20時少し前だったという。

少女はそれからまもなく、エディにトイレと言い置いて店を出たらしいが、戻らないので探しに行くと、裏の茂みでもつれ合う人影があり、とっさに名前を呼ぶと、影はぱっと離れたので、さすがにきまり悪くなって逃げ帰ったとのことだった。

ゴアのバードサンクチュアリは愛好家に人気。

暗くて男の顔はよく見えなかったという。そこで避妊具なしに交わり体内射精した事実があるなら、精液は間違いなくその男のものということになる。仮にシーメンがその男のものということになると、他殺説は遠のいて、事故死の線も濃厚になってくるのだ。

トミーによると、ソフィの水着は紐(ひも)で結ぶ方式の赤いビキニだったというから、潮でほどけて流されたとも考えられた。ラリった少女が足を滑らせて崖(がけ)から落ちるなど、なんらかの偶発的事故に巻き込まれたとも疑えた。体の傷は岩礁(がんしょう)にぶつけた際にできたと考えればいい。

第3の容疑者、ロッキーはアンリと同業だったが、少女を狙っていたとの裏が取れたので、しょっぴいたものだった(続く)。
(【印度の玉手箱】はインドで暮らすモハンティ三智江さんがエッセイやショートストーリーを不定期に書きます)
ホテル・ラブ&ライフ

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