コラム・レポート

墳墓に防潮堤、韓紙と地域ごとに魅せる韓国の旅(34)

墳墓に防潮堤、韓紙と地域ごとに魅せる韓国の旅(34) 大きな石を小さな石が見事に支える墳墓「コインドル」。絶妙なバランスだ!

【minamiのちょっとオキナワン】全羅北道(ぜんらほくどう、チョンラブクド)のもっとも南西に位置する高敞(コチャン)郡は、世界文化遺産に登録された「高敞ドルメン」があることで有名だ。

緑に包まれた広大なエリアに、地下の墓室を巨大な石で覆(おお)った先史時代の墳墓「コインドル(支石墓)」447基が点在する。上面が平らなテーブル型や4本足の碁盤(ごばん)型などがあり、いずれも「どうやってこんな何トンもある石を積み上げたのか?」と思わせる造りで、その謎解きが面白いのだが、ここでは伏せておく。

日本の飛鳥時代を思わせる高敞の歴史遺跡の後は、隣の扶安(プアン)郡で一転して韓国の近未来を担う最先端技術を垣間(かいま)見た。西海岸のふたつの岬を防潮堤で結んで、その内側のおよそ4万haを埋め立ててしまおうという、「セマングム」の一大干拓事業だ。


「セマングム」の防潮堤に設けられたダム。左側の海水がいずれ抜かれることになる。

世界最長の防潮堤のほぼ中央にある展望タワーから全貌を眺めたが、囲った湾の海水を抜いていくという発想には脱帽した。開発完了は2020年の予定で、内部の産業団地の分譲は2010年から始まるそうだ。すごいなぁ!

南部の淳昌(スンチャン)郡は韓国の唐辛子味噌「コチュジャン」の名産地である。コチュジャン自体は各地で造られているが、淳昌コチュジャンは朝鮮王朝に500年間にわたって献上された伝統の逸品だ。

鉄分の多い水、70%もの湿気、雪に閉ざされる冬・・・そんな条件に恵まれた淳昌はコチュジャン造りに適しているのだという。これまた地元名産の梅や柿、きゅうりなどを漬け込んだコチュジャンなど、種類も多い。コチュジャン民俗村では、静かに熟成を待つコチュジャンの甕(かめ)が店先を飾っていた。

韓国の昔と今が交錯する道都・全州市
やや赤黒い色に光るツヤ、舌の奥に甘い味が漂うのが淳昌コチュジャンの特徴だ。

全州(チョンジュ)市はさすがに全羅北道の道都、にぎやかで見どころがいっぱいだ。私たちが宿泊したコアリベラホテルからは、眼下に「全州韓屋村」が見下ろせたのだが、伝統的な韓国の家屋が900軒以上も建ち並ぶ様は圧巻だった。

軒先のこう配が少し反る独特の瓦屋根が連なる甍(いらか)の波は、とても美しい。それらの庭先に屋根よりも高くそびえる細長い塔が必ずあるのが気になったが、ガイドのヤンさんの解説で韓国の伝統的床暖房設備「オンドル」の煙突と知って納得した。

全州は韓紙の産地でもあり、細い路地の奥に数軒ある工房では紙すきの実演(と言うか仕事中)を見ることができる。紙の原料になるコウゾで作った石けんが売られていて、「肌にいい」と聞いたので家族・友人の分までまとめ買い!おかげで肝腎(かんじん)の紙製品を買うのを忘れるところだった。

手作業で行われている韓紙の紙すき。全体に均一に原料が回るところがプロの仕事だ。

最後に訪ねたのは北部の益山(イクサン)市だ。全州ともども百済(くだら)文化の香りが残る地域で、百済の第30代王・武王(600-641)の時代に創建された「弥勒寺(ミルクサ)」が実に素晴らしい。百済最大の伽藍(がらん)で3つの寺院が並び、正面左側にある国宝指定の石塔は補修工事中だったが、内部を見学することができた。この石塔は木塔を基にその姿を石で再現したもので、木塔から石塔に変化する構造を知る重要な遺跡だそうだ。

そうした石工技術の賜か、益山市は貴金属、宝石産業の韓国内トップ都市である。宝石博物館には世界各国から集められた10万点に及ぶ珍しい宝石などが展示されていた。売店にはひじょうに手ごろな価格のアクセサリーもあったのだが、どうも輝くモノに縁のない私は買いそびれ・・・「イザというときのために!」とバッグに忍ばせていたカードは遂に出番がなかったのだった(【minamiのちょっとオキナワン】はフリーライターのあべみなみさんが沖縄の話を中心に不定期に書きますが、前回から韓国・全羅北道の旅を番外編として書いており、次回に続きます)。

【オキナワンの一品】映画ロケ地の多い全羅北道
弥勒寺の寺院のひとつ。弥勒寺創建については数々の楽しい伝説が残されている。

日本ですっかりおなじみの韓流映画・ドラマだが、全州ではアジアの代表的な国際映画祭のひとつ「全州国際映画祭」が毎年行われ、扶安には映像テーマパークがあるなど、地元の映画・ドラマ熱もかなりのものだ。

全羅北道や忠清南道(ちゅうせいなんどう、チュンチョンナムド)の扶余(プヨ)など百済や朝鮮の王朝のあった地域はロケ地となることが多く、撮影場所にはどの映画のどのシーンに使われたかが写真入りで紹介された標識などもあり、その姿を真似て記念写真を撮る観光客も。韓流ファンにはロケ地巡りもまた全羅北道の最上の楽しみ方になりそうだ。

注:地名の読みは日本語読みをひらがな、韓国語読みをカタカナで表記しています。

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